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「冒険すること。それはやっぱり、“生きている”って感じられること」
アーティストD[diː]が体験した「Odyssey Project」


クリストファー・コロンブスがアメリカ新大陸を発見した昔から、多くの人々にとって冒険やロマンの象徴とも言える海の旅。その航海を支えるのは、もしかしたら、たった1足のデッキシューズかもしれない。


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米コネチカット州で誕生した「SPERRY(スペリー)」の創業は1935年。昨年は創業から80周年を機に企業ロゴやブランドイメージを一新。ブランドの精神を体現するグローバルキャンペーン「Odysseys Await(オデッセイ・アウェイト)」を発足し、その一環で「Odyssey Project(オデッセイ・プロジェクト)」をスタートさせた。80名が参加した昨年に続いて、今年も現在までに5組の冒険者が世界各地を冒険。参加者が「SPERRY」のデッキシューズと共に向かった旅を通して、新しい自分を発見し、成長する――。そんな挑戦のドキュメントと言えるのがこの「オデッセイ・プロジェクト」だ。
そこで昨年、アジア人初の参加者としてD[diː]が選ばれた。


■ 作家/イラストレーター/アーティスト D[diː](ディー)


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アジア人初の参加者となったのは、1977年北海道生まれ。作家/イラストレーター/アーティストのD[diː]。多摩美術大学在学中に発表した『ファンタスティック・サイレント』(00年)でデビューを果たし、2003年には映画『ジョゼと虎と魚たち』のイメージイラスト/タイトルバック作画を担当。以降も小説、漫画、イラスト、ファッション、デザインなど多分野で活躍し、2015年には人気アパレルブランド『earth music & ecology』とのコラボライン『earth D[diː] & ecology』を発表し話題となる。近年は、絵本出版や商業施設ラッピング、セルフブランドの開発、全国放送のラジオパーソナリティなどより活動の幅を広げている。またアートの活動としてほぼ毎年個展を開催し新作を発表している。ネオシルクスクリーンやハーモニックペイントといった独自の技法を使い、「ハーモニー」をテーマとして制作。
今回、「オデッセイ・プロジェクト」に参加したD[diː]は、初めて訪れる場所、そこで出逢った自然や動物など「オデッセイ」という体験を通して、ひとつのアート作品に思い出を落とし込んだ。


■ 舞台は西オーストラリアの自然豊かな孤島


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冒険の舞台となったのは、オーストラリア南西に位置する都市、パースの沖合18〜19kmに浮かぶロットネスト島。島全体の約60%が手つかずの大自然として残るこの島は、A級自然保護指定の国立公園として年間50万人もの観光客が訪れる西オーストラリアの人気スポット。中でも今回の旅の目的は、この地に多く生息するカンガルー科のクワッカワラビーに会うこと。クワッカワラビーはオーストラリアの固有種で、体長は40〜50cm程度。人懐っこい性格で、顔の造りがつねに笑っているように見えるため、“世界で最も幸福な動物”と言われている。「SPERRY」のシューズを履いて現地に向かったD[diː]は旅の中で彼らとふれあい、現地の砂や木を拾い集め、ロットネスト島のエネルギーや旅の思い出を詰め込んでアートを制作した。それは一体、どのような体験になったのだろうか?


■ D[diː]Interview


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——今回D[diː]さんはオーストラリアのロットネスト島に向かって作品を制作することになりました。現地へと向かう旅の間、どんなことを考えていましたか?


行ったことのない土地だったので、最初は「何をしよう?」というよりも「まず、たどり着くことが重要」という感覚でした。一度シドニーに飛んでから国内線で4時間くらいかけてパースに向かい、そこから高速フェリーで島を目指しました。日本からパースまでが約16~17時間。そこからロットネスト島に向かうまでの2時間弱、高速船も揺れたので、かなり船酔いしました(笑)。待ち時間も入れたら合計で丸1日近く移動にかかり、着いた瞬間からロケ撮影が始まって、今度は自転車で島を3時間くらいかけて一周…という。完全に時差ぼけもしていたので、なかなか過酷なかんじで旅はスタートしました。


——実際に訪れたロットネスト島の大自然はどうでしたか?


海も綺麗だったし、海風で木が倒れたまま成長したりしていて、随分日本の風景とは違いました。クワッカワラビーも現地に着いてすぐ、ホテルに向かう途中で沢山寄ってきてくれましたね。子供の頃、『ハウス名作劇場』のオーストラリアの開拓時代を舞台にしたアニメ『南の虹のルーシー』で動物がたくさん出てくるのを観て、いつか行ってみたいと思っていたので一つ夢がかないました。ロットネスト島は、人と動物との垣根がない場所でした。それに、パースに戻った時に植物園にも行って、そこで南半球の様々な植物を観ることが出来て。ジュラ紀の頃の植物が原生的に残っているものもあり、その大きさや造形に圧倒されました。


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――そしてD[diː]さんは、今回の旅で訪れた場所で様々なものを拾い集めて、ひとつのアート作品を完成させていますね。これはどんなアイディアだったのでしょう?


「旅の思い出を閉じ込めよう」と思ったんです。土地の持っているエネルギーは、場所によって全然違います。そこで海に行って色んなものを拾ったり、その辺りに落ちている木をもらってきたりしました。今回使った木の切れ端はほとんどがロットネスト島で集めたものです。コアラが食べるユーカリの葉っぱもそう。珊瑚も島の砂浜で取りました。それに加えて、白いパズルに訪れた場所の名前やメッセージを書いてちりばめています。島に向かう高速船のチケットや、カンタス航空(オーストラリア~南半球最王手の航空会社)のチケットも、島のガイドブックにあった地図や私が旅の途中に描いたいたずら書きも、スペリーから届いた手紙も素材として作品に使いました。そして一番下のキャンバスには、ロットネスト島で採った砂を混ぜて塗っています。島自体からは穏やかなパワーを感じたので、それを作品に閉じ込めたいと思いました。


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――今回使用した「ハーモニックペイント」という技法についても教えてください。


近年、私が何においても重要だと感じているのが「調和」です。これだけ、世界が混沌としていて、すべてが白や黒などでは言い切れない時代になっているなかで、では、どうやって心の平安や状況のバランスを保って行くか…その鍵となるのが、「ハーモニー」つまり「調和」なんじゃないかと。それは、たとえば料理を作る時に、いくら高い食材を集めて調理してもハーモニーを奏でていないと美味しくはならない。ひとつのコミュニティの中では、実は、良い人も悪い人もいないと、その場は機能しない。ミクロでみても、マクロでみても、調和さえうまれていれば、その場や状況、関係性は成立するのです。それを作品上で再現するというのが私の試みです。今回の「オデッセイ・プロジェクト」は「私のオデッセイ(=長期の放浪、困難をともなう旅)」なので、旅の記憶や思い出を閉じ込め、ロッドネスト島の持つエネルギーの調和を表現しました。


――D[diː]さんが動物や植物をモチーフに作品を作ることが多いのはなぜなのでしょう?


私は北海道出身なので、小さい頃、大自然は日常の風景でした。でも、東京に出てきて、周りに自然が少なかったので、それを作品の中で再現することで、生まれ育った状態にもう一度戻したいという潜在意識なんじゃないでしょうか。それに、そう言いながらも、私はもともと動物も植物もアレルギーがあるので自然の中に長時間はいられないんですが、自分で表現したものであればアレルギー反応は出ないですよね。だから作品を作ってるんじゃないかと思います。


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――そうすると、今回の旅はD[diː]さんにとって相当な冒険になったのかもしれませんね。


ロットネスト島は紫外線もすごかったので、動画にもその写真がでてますけど、ちょっと自転車で走り回っていただけで、気が付いたら日に焼けて全身火傷みたいになってました。私は文字を作品にすることも多いので、今回は、「ODYSSEY」というワードは入れて作品を作ろうってのだけは決めてました。その周りに記憶や思い出をどう配置するか。どの素材を使うか…ってのは、まず集めてからでなくてはわからないので、とにかく、直射日光のなか走り回って、ガラクタや植物採集にいそしみました。普段は、仕事部屋にこもって作業してるだけなので、これだけフィールドワークをしながらの作成は、ほぼ初めてに近かったので冒険だったと思います。


――D[diː]さんにとって、「新しいことに挑戦する」「冒険する」ことの最大の魅力とは?


それはやっぱり、「生きてる」って感じられること。何かを始めると知らないことが沢山出てきますが、その時の「出来ない自分に対する悔しさ」って、大人になるとなかなか体験できないと思うんです。私はオタク気質があるので興味があると次から次へと、掘り下げるくせがあって。いまは、太極拳をならいはじめたり、絶滅した動物やレッドリストの動物について調べたり、日本ミツバチの研究家を訪ねたり、失われた文字について調べたり…と、ほぼ、一週間おきに興味の対象が増えてます。そうすると当然、発見の連続で、いつでも小学生のような気持ちでいられる。今回の「オデッセイ・プロジェクト」も、机上でその動物の魅力を知ることと、実際に現地に行くというのはまったく違う体験でした。クワッカワラビーも写真で見るのとは全然違いました。「引きや寄りだとこんな風に見えるんだ」「ああ、指かじられた。結構鋭い。ていうか、めちゃ血がでた!」とか(笑)。匂いがどうなのか、手触りがどうなのかとか、その動物の性格や性質も実際に会わないと分からない。現地に行って初めて分かることが沢山ありましたから。


――今回旅を共にした、「SPERRY」のシューズの履き心地はいかがでしたか。


脱ぎ履きがしやすいので熱さを感じるビーチの砂場でも履きやすいですし、そのままレストランにも入れます。街歩き用に使ってもいいと思う。ロゴもかわいいですよね。私は服のコーディネートによって履き分けました。また、3足あったので、1足は自分でデコレーションもしました。布用のペンを使えば簡単に出来るので、みんなも海辺で靴をデコレーションしながら、黄昏れてみるのもいいんじゃないかな。日本でも海水浴やバケーションで履いたり、女の子が日常的にスカートに合わせて履くのもいいと思う。クラッシーなところもありつつ、同時にカジュアルなところが魅力的だと思いますね。


今回D[diː]が向かった旅を記録したスペシャルムービーはこちら。あなたも「SPERRY」と共に、新たな冒険にチャレンジしてほしい。


■ D[diː]×Odyssey Project 【PART-1】


■ D[diː]×Odyssey Project 【PART-2】


■ 今回使用したシューズ 「SAYEL CLEW OX WASHED」


創設者の名を冠して「PAUL SPERRY(ポールスペリー)」と名付けられた新カテゴリーが登場。ウォッシュドキャンバスのアッパーにホワイトのソールテープが爽やかな1足。シューレースを外したようなラフなデザインですが、ゴアのおかげで足にフィットし脱ぎ履きも簡単です。外出時に携帯しやすいのでバッグに忍ばせて旅先で楽しむのもいかがでしょうか?


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Text by Jin Sugiyama
Photos by 横山マサト